池田泉州銀行
融資部 次長 渡邊幹巨様
融資部 調査役 喜多田廉平様
池田泉州銀行は、2010年5月1日に、池田銀行と泉州銀行が合併して誕生し、大阪・兵庫を中心とした営業エリアを有しています。2020年9月に無担保ローンのWeb受付から契約までのデジタル化をスタートさせた同行では、次に住宅ローンのデジタル化を計画。2023年3月よりセイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入し、電子契約をスタートさせました。住宅ローンにおける電子契約導入の経緯と導入効果について、池田泉州銀行 融資部 次長 渡邊幹巨様、同部 調査役 喜多田廉平様にお話しを伺いました。
──池田泉州銀行について教えてください。
池田泉州銀行は2010年5月1日に、池田銀行と泉州銀行が合併して誕生しました。現在の店舗数は139ヵ所、従業員数は1987名です(2024年3月31日現在)。営業エリアは、大阪・兵庫を中心としたエリアで、東京と肩を並べるほど多くの人口と事業所を抱えています。そしてアジア・チャイナ・ゲートである阪神港と3つの空港を有する恵まれた都市型マーケットを地盤としていることは、大きな強みの一つです。また、中国の蘇州、ベトナムのホーチミンに駐在員事務所を開設しており、2025年開催の大阪・関西万博を見据え、多くの外国人観光客の来阪はもちろんのこと、多くの地元企業の海外進出についてもサポートしています。
そして大阪では唯一となる「独立系」地方銀行であることも、池田泉州銀行の大きな特徴です。お客様のニーズに敏感に対応し、新たな体制や戦略を実施できるのも、その強みがあってこそ。顧客対応力では高い評価をいただいています。
DXヘの取り組みも、今まで銀行内組織であったデジタル戦略部門の組織体制を見直し、2024年6月26日よりホールディングスの直下にデジタル戦略部として移設、デジタル分野における環境変化の実効性を高めつつ、グループ一体でお客さまの利便性追求や業務生産性向上を追求していくための体制を強化しています。
地域に一番近く。お客様に一番深く。これからも徹底したソリューションビジネスを提供し、地域内のプレゼンスを高めつつ、地域の皆様に「愛される」金融グループを目指していきます。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された経緯を教えてください。
当行ではさまざまなかたちでDXの推進を行っています。その一環として、2020年9月に無担保ローンの申込受付から契約までのデジタル化を実現しました。その導入が一段落した後、次は住宅ローンで何かできないかという話になり、具体的に検討を始めたのが2021年7月頃です。
検討に際しては全体構想に時間をかけ、申込受付、審査、契約をデジタル化していく方向が決りました。そこからベンダーの選定に入り、住宅ローン契約手続のデジタル化に関わるベンダーを決定し、当行としての決議がなされたのが2022年6月です。そこから導入に進んでいきました。
まずは電子契約を先に導入して、その後、受付、審査を導入するスケジュールでした。
── 先に電子契約を導入された理由を教えてください。
申し込みから契約までのプロセスを効率化するために、申込受付、審査、契約といった各工程での業務の見直しも一緒に行いたいと考えていました。
特に電子契約導入にあたり、契約書の見直しを進めました。なぜなら住宅ローンに関わる契約書の種類、枚数ともにかなりの数があったからです。契約書は金利や契約内容によって種類が多く、お客様との契約準備、つまり必要となる契約書を用意するだけで、かなりの時間を要していました。また、契約当日にお客様の意向を確認すると想定と違う内容となり、新たに契約書を用意する手間が発生することもありました。こうした契約書の種類などを統合し、準備をより簡単にしていきたいと考えたのです。
また、近隣行が電子契約を先行して導入していたことも、電子契約の導入を先行させた理由の一つです。印紙代の負担有無が競争力に影響する可能性があるため、電子契約から優先して導入したという事情もあります。
── ベンダーの選定はどのように行ったのですか。
最終的にはセイコーソリューションズを含む3社を比較検討しました。当初は2社を比較検討していて、途中でもう1社を加えて比較検討をしました。
システム化を行うと利便性は高まる反面、アナログと比べてイレギュラー発生時の柔軟な対応が困難となることが多いですが、電子契約に関しては、可能な限り柔軟な対応ができるようにしたいと考えていました。従来の紙の契約書での運用の場合、最初のご来店で埋めきれない項目、例えば契約時点で口座をお持ちでない方の口座番号や、前月に契約を締結する場合の借入利率などは、後日、住宅ローンの資金決済時などに追加でご記入いただくことで対応していました。しかし、電子契約の性質上、電子署名後に契約書に追記することはできませんので、他の方法で対応する必要があります。また、電子署名後に契約内容を変えて欲しいというご要望が出ることもあり、契約の取下げや訂正も必要となります。こうしたケースは決して多くはありませんが、全く対応できないとなると、現実的に運用が困難となります。このようなケースに直面した際に、運用でカバーできるように、システムの柔軟性は重要視しました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された決め手を教えてください。
当事者型と立会人型、どちらの電子契約にも対応できるなど選択肢が豊富であることを評価しました。選定当時、比較検討した他社は当事者型にしか対応しておらず、事務負担が大きい当事者型だけでなく、立会人型を選択できる「融資クラウドプラットフォーム」を選択しました。
先にお話ししたように、契約内容が後から変更される可能性があることを考慮して、システムとしての柔軟性を評価しました。セイコーソリューションズからは契約書控えとともに案内書面を送付する機能があるほか、電子署名後に変更があっても対応は可能と聞いており、柔軟性が高いと判断しました。
金融機関に対する電子契約の導入実績は、セイコーソリューションズが圧倒的に多く、豊富な実例をお持ちであることは安心感と信頼感につながりました。
── 導入をお決めいただいた直後にユーザー会に参加されました。参加された感想をお聞かせください。
導入の契約が済んだ直後のタイミングでユーザー会に参加しました。先行して導入されている他行の担当者との接点を持ち、具体的な話を聞くことができたのは大きなメリットですね。導入時にどういった課題があったのか、それをどう解決したのかをお聞きすることで、当行での導入検討をより具体的にすることができたと思います。
また、電子契約率向上に関する取り組みについてお聞きした際には、「印紙代がかからないメリットが大きく、自然体で電子契約率は向上した」という意見が大半でしたので、安心して導入を進めることができました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入効果を教えてください。
2023年3月13日より利用を開始しましたが、電子契約率は3月の実績で6割超、翌4月には8割後半、5月以降は9割後半となりました。9月には電子契約率100%を達成し、以降は100%を維持しています。よほどの事情で電子契約ができないお客様がごくまれにいらっしゃる以外は、100%電子契約に移行しました。
肌感覚ですが、紙の契約で契約と同時に口座開設を受付する場合、合わせて約1時間程度かかっていました。電子契約導入後は約10分程度で終わるようになったため、口座開設の待ち時間に付随取引の提案を行う等、セールスにつなげやすくなったとの声も現場から聞いています。
紙の契約書の時代は、契約書をコピーしてお客様に控えとして交付していましたが、その必要がなくなりました。また、行内での書類送付や保管の負担も大幅に減っています。具体的には、契約書の現物一式を集中処理拠点に社内便で送って実行オペレーションを依頼し、その後、集中保管拠点にそれらの書類を送る手順となりますが、これらの送付作業も数枚で済むようになりました。今後、保管拠点のスペースの縮小、保管コスト軽減などにもつながっていくと思います。
お客様にとっては印紙代のご負担がなくなったことが大きなメリットだと思います。当行として電子契約手数料をいただきますが、ほとんどのケースで印字代よりも少額となるため、今のところ現場から不満の声は聞こえていません。
── 導入時に工夫されたことがあればお教えください。
利用を開始する約1ヵ月前からステージング環境を行員に開放して、練習期間を設けました。各拠点での練習状況はモニタリングして、必要に応じて指導を行いました。この期間があったから、利用を開始してすぐに6割、翌月には8割と順調に電子契約への移行ができたのだと思います。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の今後の活用予定を教えてください。
住宅ローン分野で「つなぎローン」など、対応範囲を広げていく予定です。他には、ローンの条件変更契約の電子化等、徐々に広げていきたいと考えています。
また、ベンダー選定の段階ではありますが、事業性融資の部門でも電子契約導入に向けた検討を進めています。
── セイコーソリューションズ並びに「融資クラウドプラットフォーム」への期待、リクエストなどありましたらお聞かせください。
選定のとき、そして導入に際して、そして導入後もかなり細かな質問をさせていただきました。毎回、丁寧かつ迅速に回答していただけましたので、すぐに次のステップに移ったり、運用の疑問を解決できています。こうした対応を今後もぜひ続けていただきたいと思います。
「融資クラウドプラットフォーム」は導入行も多く、いろいろな要望がセイコーソリューションズに寄せられていることと思います。それらを吸収して機能の拡張、パッケージとしての充実を図っていただけるよう期待しています。また、情報があふれている時代ではありますが、必要となる情報を収集するには手間がかかります。いろいろな要望や寄せられている実例などの、情報共有の場としても大いに期待しています。今後ともサポート、ご提案などよろしくお願いします。
池田泉州銀行様、 本日はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。