京都中央信用金庫
デジタル戦略部 次長 中里 直様
業務サポート部 業務企画担当 課長 溝 信之様
京都中央信用金庫は1940年に創業し、京都市及び京都府、滋賀県、大阪府、奈良県の一部を営業エリアとし、現在135店舗を展開しています。2021年4月からの新中期経営計画では「DXへの挑戦」をコア戦略に取り組み、2021年12月、経済産業省のDX認定制度において、信用金庫では初めての「DX認定事業者」に認定されました。セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入し、2023年6月より住宅ローン、消費性ローン、そして2024年6月からは事業性融資において電子契約を実現した経緯と導入効果について、京都中央信用金庫 デジタル戦略部 次長 中里 直様、業務サポート部 業務企画担当 課長 溝 信之様にお話を伺いました。
──京都中央信用金庫について教えてください。
京都中央信用金庫は「京都市中央市場信用組合」を基盤として、1940年に創業しました。京都市及び京都府、滋賀県、大阪府、奈良県の一部を営業エリアとし、現在135店舗を展開しています。当金庫ではお客さまのDX・GXを含めたサステナビリティ経営への課題に対して、地域貢献はもとより、生産性向上、競争力強化に寄与するソリューションを提供しています。2024年3月期の預金(譲渡性預金を含む)は5兆3,423億円に、貸出金は3兆2,981億円となり、当期純利益は141億円を計上し、信用金庫として全国トップの規模と内容を誇る当金庫があるのも、地域のすべてのお客さまのご支援のたまものと感謝しています。
当金庫では、2021年4月からの中期経営計画において、「DXへの挑戦」をコア戦略に位置づけて取り組みを進めてきました。2021年7月には『地域で一番、お客さまと“広く、深く”つながる金融機関へ』をDX-VisionとするDX戦略を策定し、デジタルを通じた劇的な生産性向上による経営資源の再配分と情報活用の高度化による提案力の強化に取り組んでいます。こうした取り組みが評価され、2021年12月、経済産業省が定めるDX認定制度において、信用金庫では初めての「DX認定事業者」に認定されました。また、2021年8月から戦略企画部内に「デジタル企画グループ」を設け、2023年7月にはデジタル企画グループを含め戦略企画部を「デジタル戦略部」に改編。DXへの取り組みをさらに強化する体制を整えました。
── セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入された背景について教えてください。
2020年頃から当金庫内における業務の効率化を進めるために、デジタル化やDXが叫ばれるようになりました。実際にプロジェクトとして未来の金庫業務のあるべき姿を考え、そこからバックキャスティング思考でデジタルによって今から何をすべきか、そのためのロードマップを策定して実行していこうという取り組みが始まりました。2021年4月からは「生産性革命計画~Biz.Revoプロジェクト~」を始動し、先にお話ししたDX戦略の推進に本格的に取り組み始めました。
そうした中で金融業界においても書面への押印など非対面化、電子化をしていこうという動きが広がりを見せていました。当金庫でも未来の金庫業務のあるべき姿の一つとして、融資手続きの非対面化、Web完結を実現していきたいと考えました。そのために必要となるパーツの一つが電子契約でした。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された経緯を教えてください。
2020年頃から情報収集を始め、セイコーソリューションズから最初にご提案を受けたのは2020年8月です。
具体的には4社から電子契約に関するシステムのご提案をいただき、検討を進めました。ご提案をいただいた1社のシステムは、当金庫が使用しているインターネットシステムとの相性が懸案事項となり、もう1社は将来的な拡張性が弱かったため、候補から外すこととしました。というのも当時から最初は住宅ローンで、その後、事業性融資や他の融資商品への展開を計画していたからです。
最終的にセイコーソリューションズともう1社を比較検討して、セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」の導入を決めました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された決め手を教えてください。
決め手は3つあると考えています。
現在の融資契約は対面で行っていますが、そこをまず電子契約にし、最終的には手続きの非対面化、Web完結までを計画していますので、その拡張性があることが大切です。
そして非対面化を進めていくと重要になるのが、お客さまが触れる部分、操作する部分のわかりやすさです。拡張性に加え、お客さまにわかりやすいことを評価しました。
セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」はパッケージ商品ですので、コスト面での導入のしやすさを評価しました。また、ユーザーサイドで設定を変更できるなど、柔軟に運用できる点も併せて評価しています。
当金庫は電子契約の導入は決して早い方ではありません。それだけに導入実績の豊富さを評価しました。先行事例が豊富であることは、導入や運用で不明な点や不安などを解決しやすいと考えました。比較した1社とは導入実績の差が大きかった印象があります。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入開発はいかがでしたか。
「融資クラウドプラットフォーム」だけの導入であれば、セイコーソリューションズがおっしゃるように半年もあれば導入して運用を開始できたと思います。ただ、同時に契約書作成システムの更改も進めましたので、実質的には約1年の導入期間となりました。2022年4月にキックオフをして、実際に運用を開始したのは2023年6月から、先行して住宅ローンと消費性ローンでスタートしました。
── 先ほど事業性融資など他の融資商品での導入も計画されているとのことでしたが、最初に住宅ローンと消費性ローンで導入された理由を教えてください。
当初は、住宅ローンのみでスタートし、2年後に事業性融資へ拡大する計画でした。
しかし、周辺の金融機関ではすでに先行して電子契約を導入しており、当金庫は後発という立場でしたので、当金庫の職員、そしてお客さまに電子契約を早期に浸透させたいと考え、取扱件数の多い消費性ローンを導入当初から対象に追加しました。
また、セイコーソリューションズの事例を拝見すると、住宅ローンと事業性融資を同時に始められた金融機関があることは承知していました。ただ、それなりに現場の負荷が大きいだろうという判断もあり、まず当金庫内での浸透を図り、そこから広げてお客さまの反応などを見ながら、効果を測定して、事業性融資への拡大や非対面化へ広げていこうと考えました。そういう意味ではスモールスタート的に始めて広げていくという判断となりました。
結果的には、早期浸透が実現できましたので、先行導入から1年後の2024年6月より事業性融資(証書貸付)での電子契約サービスを導入することができました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入効果を教えてください。
住宅ローンと消費性ローンの導入後1年で9割超が電子契約という状況です。残りの約1割のお客さまが電子契約を選択されなかった理由は、ご年配のお客さまが契約書は紙でという意向や、そもそもスマートフォンの操作自体が苦手などから、お客さまのご意向に沿ったかたちで、あえて紙の契約書にしています。
導入前の計画では電子契約率を8割で考えていましたが、幸いなことに2023年6月に導入した直後すぐに8割を超える電子契約率が達成できました。
この点では全営業店が長年扱ってきた紙の契約書から頭を切り換えて、電子契約を積極的に進めてくれたお陰です。そういう意味では当金庫の現場もお客さまにも浸透は早かったと考えています。
また、お客さまにとっては印紙代の負担がなくなることが大きく、そのことが電子契約率にも跳ね返っていると考えています。
当初目論んでいた事務の効率化やペーパーレスでは一定の成果が出ていると思います。例えば住宅ローンの場合だと、契約書に実印を捺していただきますので、印鑑証明書を提出してもらい、印鑑証明書と契約書の実印との照合作業が必要でしたが、それがなくなりました。
また、契約書の控えは、紙の場合はコピーを取って、封筒に詰め、宛名シールを貼り、その宛名が間違っていないかの照合などを行ってから郵送していましたが、その作業もなくなりました。ただ、一部紙が残っている部分がありますので、郵送作業すべてがなくなるわけではありません。ただ当然数も減りますし、その負担が減ることは大きいと考えています。
そして電子契約を行う場合、新たにサービス手数料をいただくことにしましたので、新たな収益源にもつながっています。いままでは契約事務を行っても、それに対する対価をいただいていませんでしたので、この違いは大きいと思います。
当金庫内とお客さまへの電子契約の浸透が早かったことが後押しとなりましたが、住宅ローンで使用しているシステムのままで事業性融資に拡大できた、システムの汎用性を高く評価しています。
また、事業性融資、特に法人先との電子契約方法を検討する際には、セイコーソリューションズやユーザー会を通じて知り合った他金融機関様からの情報が大いに役立ちました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を評価していただけますか。
何よりもお客さまの操作画面がシンプルでわかりやすいことを評価していますし、我々が見る管理画面もシンプルで使いやすいと思います。
そして導入してみないとわからないことかもしれませんが、我々、つまりユーザー側で設定を変更できる、触れられる箇所が想像以上に多くあります。通常は例えば色を変えるだけでも開発費用が発生します。「融資クラウドプラットフォーム」はユーザー側で設定変更できる範囲が広く、非常に使い勝手がいいと評価しています。住宅ローンなどの先行導入から1年で事業性融資に展開できたのも、この操作性による部分が大きいと思います。もちろん、設定を変更する際にはセイコーソリューションズのサポートに相談して、内容の確認をしてから変更しています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の今後の活用予定を教えてください。
事業性融資については、まず証書貸付で電子契約を実現しました。事業性融資には当座貸越や債務保証など、まだ多くの契約書類が残っています。事業者との融資の基本契約書である取引約定書も電子契約化できていませんので、これらの契約書類に関して電子化を進めていきたいと考えています。
そして現在も契約そのものは電子化していますが、その過程は対面が基本となっています。将来的には非対面化を計画していきますので、その取り組みにも注力していきたいと考えています。
── セイコーソリューションズ並びに「融資クラウドプラットフォーム」への期待、リクエストなどありましたらお聞かせください。
電子契約の仕組みとして当事者型と立会人型があり、当金庫では現在、当事者型で融資契約の電子化を行っています。ただ消費性ローンなどは簡便なやり方である立会人型でもいいのではないかと考えています。こちらはすでにセイコーソリューションズからご提案もいただいていますが、契約内容あるいは融資商品によって切り換えられればと考えています。
そして先にも触れた非対面化、Web完結に向けて計画を進めて行きたいと考えています。「融資クラウドプラットフォーム」には非対面化を実現できるシステムが含まれていますので、それらへの拡張についてのご提案、そしてサポートにも大いに期待しています。
京都中央信用金庫様、 本日はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。