千葉興業銀行
総合事務部 融資事務担当 部長代理 鶴岡康晴様(中)
総合事務部 融資事務担当 上席調査役 吉澤由佳様(右)
総合事務部 融資事務担当 調査役 武田祐人様(左)
1952年3月3日に千葉興業銀行は千葉県の事業者の声から生まれました。それ以来、地域企業の成長、個人の豊かな生活に資することを使命として歩みを進めてきました。自行のDXの取り組みの一環として、2023年9月にセイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入し、住宅ローンの電子契約をスタートさせ、翌2024年11月には電子契約の範囲を事業性融資の一部にも拡大しました。「融資クラウドプラットフォーム」導入の経緯と導入効果について、千葉興業銀行 総合事務部 融資事務担当 部長代理 鶴岡康晴様、同担当 上席調査役 吉澤由佳様、同担当 調査役 武田祐人様にお話しを伺いました。
── 千葉興業銀行について教えてください。
戦後の復興期、「県内中小企業者の親切なる相談相手たらんことを期する」を創業の精神として、1952年3月3日に千葉興業銀行〈ちば興銀〉はその歴史をスタートさせました。当時、千葉県内では、銀行は資金を東京方面に流すことが多いとの評判があり、地元銀行をもう1行設立し、1県1行主義による金融の独占を排し、競争によるサービス向上を求める声が大きくなっていました。「地元経済の復興・成長のために新しい銀行を設立してほしい」という気運が高まる中、千葉県の事業者の声から生まれました。それ以来、地域企業の成長、個人の豊かな生活に資することを使命として、歩みを進めてきました。創業の精神は、今でも全従業員にしっかりと受け継がれており、一人ひとりが誠実にお客さまと向き合い、ともに悩みながら一緒に未来へと進んでいます。
設立以来70年以上もの間、地域に根差す銀行として、千葉県の目覚ましい発展のもと、金融サービスの提供をしています。そして、社会が変革の時代を迎える今、これからも地域のお客さまのよきパートナーであり続けたいという想いから、長期経営ビジョンとして「親切なパートナーとして皆さまの幸せをともにデザインし続ける」を掲げました。
この「幸せをともにデザイン」とは、お客さまの多様な潜在ニーズを共有し、その実現に向けて伴走し続けることです。お客さまのニーズは時代とともに常に変化・多様化していますが、その本質にある「幸せになりたい」という気持ちは不変であると考え、このビジョンを掲げています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された経緯を教えてください。
当行に限らず金融機関においてDXを活用した効率化政策は必須のものと考えています。そんな中、融資事務における効率化について検討しました。債権書類をもらうためには、お客さまから融資の申込を受け、稟議書を書き、審査を行い、契約書などの書類を準備して、お客さまに足を運ぶ、あるいはお客さまにご来店いただき、契約書に署名・捺印をいただきます。その後、その内容をチェックして本部に送り、融資の実行をし、控えをコピーしお客さまに郵送するとともに、行内の所定の場所に契約期間中、完済後の一定期間は保管しておきます。このように非常に手間がかがる融資事務を効率的に行うには、電子契約が有効で、将来的には受付から契約、融資実行、そして保管までを一気通貫で電子化できることが必要と考えました。
電子化の第一歩として契約の部分から始めようと考えていた2020年頃、融資関係の業務を依頼しているベンダーから、住宅ローンの電子契約の提案があり、具体的な検討を開始しました。当行としては住宅ローンだけでなく、その先には事業性融資があり、さらに発展すれば融資以外の契約の電子化も考えていました。
検討を進める中で、ご提案いただいたシステムは住宅ローンに絞ったものであり、非対面の契約を想定しない、システムの拡張性といった面で、当行の想定からずれてきた部分がありました。またセキュリティ面でも要件を満たさない部分があり、検討を進めることができませんでした。
── 一旦検討がストップしてしまった後は、どのように検討を進めたのですか。
当行のDXを担っているデジタルイノベーション部から、セイコーソリューションズを含めて2社、電子契約システムを扱っており金融機関への導入実績が多いベンターを紹介してもらい、改めて検討を進めました。
検討のポイントとしては、システムがどれだけ柔軟性を持った対応ができるか、その後の電子契約取引などへの拡大に際しての拡張性があるか、システム部門で運用している既存のシステムとの相性、そして金融機関への導入実績を比較検討しました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」導入の決め手を教えてください。
導入の決め手は次の3点です。
1.システムの汎用性の高さ
まず住宅ローンから始めて、徐々に電子化の対象を拡大していくことを検討していましたので、汎用的にいろいろな契約に対応できる点を評価しました。対象を拡大していく中で、追加の開発が必要なく次のステップに進めるのは大きな魅力でした。
2.導入実績が豊富
他の金融機関への導入実績が豊富な点は高く評価しました。そして当行は地銀共同センターの勘定系システム基盤を活用していますが、地銀共同センターに参加している他の銀行もすでに何行か導入している点も安心でした。
3.パッケージ商品としての提供
「融資クラウドプラットフォーム」はパッケージ商品としての提供です。システム導入でありがちな、話を進めると個別の開発が必要になり、追加費用が発生するといった懸念がない点を評価しました。当行では住宅ローンの次に他の電子契約へと展開を予定していますので、その際に追加の開発が必要なく、コストの心配もいらない点は大きな決め手です。
また、パッケージでありながら、ユーザー側で自由に設定できる点も評価しています。契約書データの連携や、お客さまがご覧になる契約画面なども比較的自由に設定ができる点も、決め手の追加としてあげておきます。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入そのものはスムーズでしたか。
2022年6月に契約をして、夏頃から導入が始まりました。既存のシステムとの連携は比較的早い段階で行えました。時間がかかったのは、それまで電子契約に馴染みが薄かったこともあり、万が一不良債権が発生した場合の対応などについての課題が出てきて、その解決に少し時間が必要でした。
住宅ローンの電子契約をお客さまにリリースできたのが2023年9月です。
── 2024年11月からは事業性融資の一部でも電子契約をスタートさせました。こちらは住宅ローンと同時に準備されたのですか。
事業性融資に関しては、2024年1月から本格的な検討を始めました。事業性融資にはいろいろな種類があるので、どの部分からスタートするかを検討し、当初は事業性融資で保証人なし、担保なしの案件から始めることとしました。
住宅ローンに関しては、基本的に2ヶ所のローンプラザでの取り扱いとなりますので、専門に取り扱う社員が担当します。一方で事業性融資は営業店での取り扱いとなり、それだけ多くの社員が関わります。電子契約システムに慣れてもらう時間も必要だと考え、スタートから半年はシステムに慣れてもらう期間としました。その後、次に拡大する部分を考えて、事業性融資開始1年後にラインナップを充実できたらと考えています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入効果について教えてください。
1.住宅ローンでは導入半年かからずに電子契約率8割を達成、1年後には95%に
住宅ローンは当初電子契約率8割を見込んでいました。9月に導入を開始して、12月には7割を超えて、翌2024年2月には8割を超えました。4月以降は90%~95パーセントを維持し、10月と11月の平均は97%となっています。住宅ローンにおいてはほぼ電子契約となっていますので、定着したといっていいでしょう。
2.契約書の書き損じ、不備がなくなった
お客さまも当行もですが、契約書の書き損じ、不備が基本的になくなりました。紙の契約書の時代は、住所や氏名の書き間違い、捺印のかすれなどはどうしても発生することがありました。今では最初にきちんと確認を済ませておけば、あとはスムーズに行きます。
また、住宅ローンを契約される外国人のお客さまも増えています。紙の契約書では、慣れない漢字を書く必要があり、時間もかかり、大変な思いをされていました。外国人のお客さまにとっては、申込から契約まで非常にやりやすくなったと感じています。
3.融資事務の効率化につながる
紙の契約書では事前に稟議書を書いて、審査して、それをもとに契約書を作成しているのに、実際に署名・捺印してもらった後にも、不備がないかの確認をしていました。
電子契約では今まで以上に準備をきちんと行いますが、契約以降は確認の必要がなくなり、効率化につながっています。
4.事業性融資は今後の展開に期待
2024年11月にスタートした事業性融資では、電子契約を行うための条件を設けましたので、一気に多くの契約とはなりません。先にもお話ししましたが、事業性融資は営業店での取り扱いですので、多くの社員にて電子契約に慣れてもらうことが必要です。セイコーソリューションズに検証環境を用意してもらい、営業拠点の社員に触れて慣れてもらうための環境を整えられたことも評価しています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の住宅ローンの画面には、ちば興銀イメージキャラクター「ちばコーギー」が登場しているとお聞きしました。
これも「融資クラウドプラットフォーム」がユーザー側で自由に設定できるいい点だと思います。契約画面などはどうしても味気ないものになりがちだと思います。そこを当行が自由に設定して、住宅ローンの画面各所に「ちばコーギー」を登場させています。契約という大事な画面ですが、お客さまにはリラックスして進めていただきたいので、当行ならでは工夫を画面などに自由に反映できるのは「融資クラウドプラットフォーム」の大変いい点であり、高く評価しています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の今後の活用予定がありましたらお聞かせください。
少しお話ししましたが、事業性融資に関しては、営業店の社員にまず慣れてもらい、お客さまにお勧めしやすい環境を作りたいと考えています。徐々にですが、慣れてきた社員も増えていますので、事業性融資開始1年後をめどに電子契約の内容、扱い範囲の拡充ができればと考えています。
またアイデアレベルですが、融資以外の契約で電子契約が使えないか、他の契約にも広げていければという声は上がっています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」、セイコーソリューションズへのリクエスト、期待などがありましたらお聞かせください。
電子契約が稼働したある時、思わぬ動きをする時があり、セイコーソリューションズに相談しました。そこで原因に関して教えてもらい運用でのカバーが可能とわかりました。さらに次のバージョンアップで修正したバージョンにしてもらえるとのことで、とても助かっていますし、クラウドシステムのメリットは非常に大きいと感じています。
また、完済済みの案件に関しては、紙の契約書は保管期限が決まっているので、期限がくれば廃棄します。電子契約書も同様に自動で廃棄できるといいなと思います。
事業性融資への展開など、新たな展開をする際にはいろいろな疑問が出てきます。他行ではどうやっているのか、どのような考えで対応しているのかはセイコーソリューションズに教えてもらうしかありません。役員の中には、電子は電子の仕組みで、別の考え方で進めた方がいいという意見もあります。現場的には難しいと感じる部分ですが、こうした情報に関しても、またサービサーや裁判所の対応といったことも、いろいろな情報が集まると思いますので、ぜひ情報提供いただきたいですし、大いに期待しています。
千葉興業銀行様、 本日はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。