導入事例

eviDaemon 公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団 様

公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団 様

 

JCSS標章付き校正証明書の電子化に必要となる改ざんの防止と改ざんの検知、発行元の証明機能は、「eviDaemon」の導入により実現できました。

 

公益財団法人医用原子力技術研究振興財団
線量校正センター 部長 成田克久様(左)
線量校正センター 主任 後田藤太様(右)

 

公益財団法人医用原子力技術研究振興財団は、放射線治療を品質管理面で下支えする計測校正事業をはじめ、放射線医療分野における医師・診療放射線技師・医学物理士等の人材育成、国民に対する知識普及、専門情報の収集・発信などの事業に取り組んでいます。医用原子力技術研究振興財団ではセイコーソリューションズのデジタルエビデンス・ソリューション「eviDaemon」を導入し、JCSS標章付き校正証明書の電子化を実現しました。導入の経緯と選定理由、導入効果について、線量校正センター 部長 成田克久様と主任 後田藤太様にお話を伺いました。

課題

  • 線量計校正事業の業務フローの効率化を目的とするDXの一環として、紙で発行していた校正証明書を電子化する必要があった。
  • JCSS標章付き校正証明書の電子化にあたり、改ざん防止、改ざん検知、および発行元の証明といった要件をクリアすることが求められた。

導入効果

  • 校正証明書の電子化は、複雑な操作も不要でシステムも安定的に運用できている。
  • 校正証明書の電子化により、封入・発送という人手が必要な業務を削減することができ、業務効率化につながった。
  • 業務フローの電子化に伴う校正証明書の電子化は、財団としてのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一助となった。

1. 【導入の背景】 校正証明書を電子媒体で発行したい

── 公益財団法人医用原子力技術研究振興財団について教えてください。

当財団は、1996年3月に科学技術庁(現文部科学省)と厚生省(現厚生労働省)の共管のもとに設立されました。その設立目的は、原子炉や加速器等から発生する粒子線等による先端的がん治療をはじめとする、各種放射線による疾病の治療ならびに診断等、医用原子力技術の研究を推進するとともに、その普及を図ることです。

現在の主な事業内容は、放射線治療を品質管理面で下支えする計測校正事業をはじめ、放射線医療分野における医師・診療放射線技師・医学物理士等の人材育成事業、講演会・セミナー・施設見学会等の開催や広報媒体・資料の発行、および関連分野の調査分析事業、関連する情報収集・発信等です。わが国は、世界最速で超高齢社会に移行しつつあり、がん、認知症など高齢者に多い疾病の激増が見込まれ、その診断、治療に果す医用原子力技術の重要性は増すばかりです。当財団は、非営利・公益組織として、将来にわたりその重責を果していきます。

2004年4月に開始した治療用線量計校正事業は、公益社団法人日本医学放射線学会(日本全国14カ所の医療用線量標準地区センター)が行っていた校正事業を引き継いだものです。本事業は、医療放射線監理委員会の監理・監督のもとで行われており、現在、一般のユーザー向けに国内で治療用線量計校正事業を行っているのは当財団のみとなっています。当財団は、2008年11月26日付けで「計量法校正事業者登録制度(JCSS)」の認定を受け、JCSS登録事業者となりました。これにより、JISQ17025(ISO/IEC17025)に準拠した校正機関の能力を有することが認められ、2009年1月よりJCSS標章付き校正証明書を発行しています。

JCSSにおける計量トレーサビリティシステム図  (独立行政法人製品評価技術基盤機構のWebサイト参照)
JCSSにおける計量トレーサビリティシステム図  (独立行政法人製品評価技術基盤機構のWebサイト参照)

──現在、医用原子力技術研究振興財団ではセイコーソリューションズのデジタルエビデンス・ソリューション「eviDaemon(エビデモン)」を導入し、活用されています。導入のきっかけを教えてください。

治療用線量計校正事業では年間約3000件の線量計校正を行っており、その結果をJCSS標章付き校正証明書として発行しています。校正事業は、医療機関で放射線治療などに使われる計測機器の校正を行うもので、正しい治療が行われるために医療機関の品質管理をサポートする事業となっています。
この校正事業で発行する校正証明書は2022年度までは紙に印刷した証明書をお客様に郵送して結果を知らせしていました。2023年度からは電子媒体で発行してお客様にお渡しするように変更しています。ただしJCSS校正証明書を電子発行する際の要件として、改ざんの防止と改ざんの検知、および発行元の証明といった機能が求められています。その要件を満たすためのソリューションとして、電子署名・タイムスタンプの導入が必要になりました。

2.【導入の経緯】証明書発行までの業務フローを電子化

── 証明書を電子化するための取り組みについて教えてください。

校正証明書を電子化するためには、そこに至るまでの業務フローをから電子化する必要がありました。実際のところ、依頼の受付に関しては電話やFAXによるものが多く、簡単な問い合わせ等でも人手が必要な状況で、オンライン受付等が一般的となっている世の中からすれば、時代遅れと言わざるを得ない状況でした。そこでDXを進めて、スマートなかたちで業務を進められるように変更しようと考えたのです。受付をオンラインのみとして、お客様が入力したデータをそのまま作業に流せるようにし、そのデータの流れで最終的な校正証明書の発行・交付までを電子化する計画を立てました。計画としては4~5年前から検討していましたが、具体的に着手したのは2020年になってからでした。
2023年度からは受付から証明書発行までの業務フローが電子化され、アナログな作業はほぼなくなりました。これらは効率的な業務フローの確立にとどまらず、ヒューマンエラーの機会を減らすことにもつながっています。

「線量校正センターとして業務DXを推進していこうと決めたことが、導入のきっかけです。」と、成田克久様
「線量校正センターとして業務DXを推進していこうと決めたことが、導入のきっかけです。」と、成田克久様

── 電子署名・タイムスタンプの選定要件があれば教えてください。

JCSS標章付き校正証明書を発行するためのソリューションの選定にあたっては、下記の要件を定めました。
1. 電子署名の付与作業に複雑な操作が不要なこと。
2. お客様側に特別なスキルを求めないこと。

 校正証明書が利用されるシーンは主に放射線治療の測定を行う場面となります。具体的には診療放射線技師や医学物理士の方が想定されていますが、電子署名がついているファイルを扱うことはあまりないと考えられました。そのため、発行元が配布する署名情報を取り込んで検証するといったスタイルの電子署名は避けたいと考えました。
3. 国際標準規格「PAdES(PDF規格)」に準拠した電子署名であること。
4. ネームバリューがあること。

 JCSS校正証明書を電子発行しているケースはまだ多くなく、受け入れのハードルを下げる必要がありました。タイムスタンプや電子署名でセイコーソリューションズの名前は知られていますので、お客様にとって聞いたことのある会社の方が安心してもらえると考えました。

3.【導入の決め手】 JCSSが定めた要件をクリアするために不可欠

── どのようにして導入ソリューションを選定されたのですか。

電子署名をつけるためのソリューションはインターネットやWEBセミナー等で情報収集をおこないました。実際に比較検討したのはセイコーソリューションズの「eviDaemon(エビデモン)」を含め、3つのソリューションです。

比較した1つのソリューションは、「PAdES(PDF規格)」に準拠しておらず、お客様に証明書の電子ファイルとは別に電子署名ファイルをお送りして、取り込んでもらうやり方でしたので要件を満たしていませんでした。

もう1 つ比較したソリューションは電子化した契約書に電子署名を付与することを想定したプラットフォームで、電子署名を付与するフローが少し複雑だったことと、本来の使い方が契約書ですので、私たちの目的とは違っていました。

セイコーソリューションズには、業務フローの電子化の筋道がついた2021年に一度連絡して資料をもらい、DXのブループリントが完成した2022年の秋頃に再度連絡をして具体的な打ち合わせを始めました。そして2023年2月に契約をして、4月から運用を開始しました。

「AATL対応の電子署名が使うことで、お客様側の負担を小さくすることが必要でした。」と後田藤太様
「AATL対応の電子署名が使うことで、お客様側の負担を小さくすることが必要でした。」と後田藤太様

── セイコーソリューションズの「eviDaemon(エビデモン)」を導入された決め手を教えてください。

実は導入前に電子署名やタイムスタンプについて情報収集をしているときに、解説資料などを参考にさせてもらったのがセイコーソリューションズのWebサイトでした。
私たちが定めた要件をすべて満たしていることはもちろんですが、電子署名の仕組みや具体的な使い方を知るために参考にしていた会社が提供しているソリューションであったことは大きいですね。

一番の決め手は校正証明書を電子媒体で発行し、JCSSが定めた要件※をまとめてクリアするためには、セイコーソリューションズの「eviDaemon(エビデモン)」が最適であると判断したからです。

── 「eviDaemon(エビデモン)」自体のインストールはどうされましたか。

自分たちで行う方法とセイコーソリューションズのスタッフに来社してもらう方法がありますが、当財団では来社してもらう方法を採りました。
事前準備についてもご連絡いただき、1時間もかからずに事前準備は行えました。
実際のインストールはスタッフの方に来ていただき、半日もかからずに終了し、その後すぐに使える状態にしてもらいました。インストールの当日に自分たちで何かをすることはありませんでした。

4 .【導入の効果】 使用方法は簡単でシステムも安定的に運用

── 2023年4月から「eviDaemon(エビデモン)」の運用を行っていますが、実際に運用された感想を教えてください。

4月から毎週約60件の証明書を発行しており、延べ1800件を発行しています(2023年10月時点)。使用方法は簡単で、電子化された業務フローに則って生成された校正証明書の電子ファイルを、「eviDaemon(エビデモン)」のフォルダに入れるだけで、電子署名とタイムスタンプが付与されて戻ってきます。
ですので、操作や運用でトラブルや困ったことも特にはありませんし、システムも安定的に運用できています。

お客様にとっても電子署名がついた校正証明書が原本として手元にありますから、ファイルそのものを消去しない限りずっと残るのは安心だと思います。紙で証明書を発行していたときは、紛失に伴う再発行の依頼は毎月何件かありましたが、そうした依頼もなくなりました。

──お客様にとっても校正証明書の電子化はメリットがあるのですね。

そうですね。お客様の運用面を考えると、校正証明書をもらうために発生した費用を経理部門などに伝える際、紙の証明書の場合はコピーを取るなど控えを回されていたと思います。現在の校正証明書は電子ファイルなので、そのまま転送するだけで同じことができるわけです。ハンドリングの面では紙の時代よりもよくなっていると思います。

──医用原子力技術研究振興財団としての導入効果を教えてください。

校正証明書の電子化には不可欠なソリューションであり、依頼の受付を含む全体的なDXの達成は大きな意味を持ちます。効率的な業務運用によって確保できた人的リソースは他の部分に充てることもできています。DXの時代の流れについていけたことは、当財団としても大きなメリットと考えています。

また以前は証明書をお客様に郵送していましたので、今後予想されるコストの上昇の可能性を考えると、そこで発生するコストをお客様に転嫁しなくても済むことは大きな意義があると思います。

5.【今後の期待】目的が達成され、現時点で大満足

──今後の「eviDaemon(エビデモン)」の活用予定がありましたらお教えください。

線量計校正事業を行う線量校正センターには、その他に「出力線量測定事業」と「強度変調放射線治療(IMRT)郵送調査」があります。この2つの事業でも証明書を発行しており、現在も紙での発行を行っています。今後、この2つの事業でも業務フローの電子化を予定していますので、電子化されて証明書発行も電子化できた際には、「eviDaemon(エビデモン)」による電子署名とタイムスタンプの付与を活用する予定です。

──JCSS標章付きの証明書を発行している企業・団体では、証明書の電子化は進んでいるのですか。

当財団が電子化の検討を進めている段階で調査をしたところ、JCSS登録事業者は約350以上ありますが、JCSS校正証明書を電子発行している登録事業者は10もなかったと記憶しています。紙媒体から電子媒体への変更では、今までになかったところが要求されますので、どうやって解決しようか悩んでいる事業者も結構いるのではないでしょうか。今回の当財団のケースがそうして悩んでいる方たちの解決方法を探す一助になればと考えています。

── セイコーソリューションズ並びに「eviDaemon」への期待、リクエストなどありましたらお聞かせください。

校正証明書の改ざん防止に関しては十分に目的が達成されており、正直なところ現時点で大満足しています。今後、予期せぬトラブルがないとも限りませんので、そうした際にはサポートをよろしくお願いします。

 

※JCSSが定めた具体的な要件
「登録及び認定の一般要求事項」 5.2.2.9 電磁的方法による校正証明書の発行
電磁的方法により校正証明書を発行する場合、発行及び交付に係る手順をもち適用すること。その手順には、記載事項の改ざんを防止するための措置及び機密情報の管理を含めること(備考 1~3)。
(中略)
備考2: 「電子署名及び認証業務に関する法律」(平成12年法律第102号)第2条第1項に規定される“電子署名”の使用は、発行者の明確な特定、及び記載事項の改ざん等を防止するために有効である。
(後略)

 

医用原子力技術研究振興財団様、
本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

お客様プロフィール

◎公益財団法人医用原子力技術研究振興財団
URL https://www.antm.or.jp/index.html
※ 取材日時 2023年10月

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